決まった曜日の決まった時間にその建て付けの悪いドアが音を立てて開くのを、彼らは待つようになっていた。最初は時間もまちまちだったり、開かない日もあったけれど、扉が開かない日はだんだんと減り、まるで習慣のようになった。ちょっとした変化かもしれないが、それが実はとんでもなく貴重だということも知っている。

「お、いらっしゃい」

控えめに開いた第二美術室の扉からまず覗くのは、上向きにくるんとはねた髪房だ。続いて吊り気味のオリーブグリーンの目が覗いて室内の様子を窺う。まるで踏み込む場所に敵軍が居ないか確かめるように警戒心丸出しの様子で目を瞬かせた後、漸く扉をくぐる。

「今日は早いね、六限目は?」
「自習んなったから抜けてきた」
「あらま」

そっぽを向いて扉を足で閉めたロマーノの言葉にフランスは咎めるわけてもなく眉を上げて目を丸くする。授業をサボることについては他人に説教を垂れる立場ではないのだ。このあいだも退屈な授業を抜けて屋上に居た身としては是非もない。
どうぞ、とフランスの勧めた椅子に腰をおろしながら、ロマーノが様子を窺うように横目で見上げてくる。

「怒んねーの」
「俺も人のこと言えた義理じゃないからね。それに」

ロマーノが来てくれたからむしろお兄さんとしては嬉しいよ。にっこり笑ってそう言うと、一瞬きょとんとした後、ロマーノは真っ赤になった。あ、怒声がくるかなと思ったフランスはその反応に思わず唇を緩める。これはどうして、大進歩だ。思わずによによと顔面表情筋を緩めてロマーノを眺めれば、彼はきっと眉を吊り上げて睨み返してきた。

「な、なんだよコノヤロー」
「んー、なんでもないよ」

本当は「照れてる?」などと図星を突いて更に真っ赤になるロマーノを見たいところだが、ゆるりと噛みつくのをかわしてフランスは微笑った。あんまりつっついては、意地っ張りの君は頑なになって警戒の壁を厚くしてしまう。力の加減をしてやらなければならないのだ。
ひょこひょこ揺れる焦げ茶の髪を撫でたい衝動に駆られるけれど、手を伸ばしても届かない距離に居るから、まだ駄目だ。ロマーノに関する暗黙の了解のようなものをフランスはだいぶ理解するようになっている。だから、こんな風に授業をさぼって此処までくることの貴重さと、そうなるようになったこれまでの積み重ね、ロマーノの勇気をフランスはよく知っている。
描きかけのキャンパスに向き直ってパレットと絵筆を取り上げる。再び作業に没頭し始めたフランスの横、少し離れた椅子に逆向きに跨って背もたれに頬杖をついたロマーノはぼんやりとそれを眺めた。
放課後の特別教室という場所はそこだけ時の流れが止まってしまったかのような不思議な空間だと思う。半ばカーテンの引かれた窓から差し込む午後の光に、並んだ石膏像が床へ影絵を落としている。静かな、滞留する空気に混ざる絵の具の匂い。
絵を描くフランスを見るのが、ロマーノは嫌いではない。(口が裂けても言わないけれど)白いキャンバスに筆先が触れて、始めは乱雑に置かれているように見えるたくさんの色が、徐々に互いに混じり合い形を変えて風景になっていくのは、魔法のようだと思う。しなやかだが筋の強い男らしい指が絵筆を操る様を眺めていても、一向に飽きないことも不思議だ。絵を描いている時のフランスは普段と違うかおをしているとロマーノは思う。いつもは気障な仕草と甘い言葉で(それが様になるから余計にたちが悪い!)女生徒たちと軽妙な会話を繰り広げているのに、キャンバスを前にしている彼の蒼い眼はどんな貴婦人に対するものかというほど真摯だ。

(こいつ、こんな顔もできんだよな……)

もとは良いんだからこうしていれば普通にかっこいいのにな、などとぼんやり考えてロマーノははっと我にかえる。

(なに考えてんだ俺、バカか!)

自問自答してぶんぶんと首を振り、先程の思考を追い出そうとして、部屋の別の作業台に乗っている彫刻に気がつく。石膏と彫刻刀が放り出されたままの状態のそれは、石の塊から半ば孵化しかけている鷲の彫像だ。

「あ……アイツは?」
「んー?プーちゃん?」
「来てんじゃねえのかよ」
「プーちゃんはジャンケン負けたからねー」

キャンバスから目を離さないままでのんびりとしたフランスの返事が返る。的を射ていないように聞こえるが言わんとすることが如実にわかる台詞にああなるほどと溜め息をつく。つまり今日のパシリ役はプロイセンらしい。

「不憫……」
「あはは。そうも言ってられないんじゃない?」
「なにがだよ」

振り返ったフランスが絵筆で背後を指し示すのと、建て付けのよくない扉が吹っ飛ぶんじゃないかという勢いで開くのがほぼ同時。ガラガラピシャン!凄まじい音に被ってハスキーかかった声が鼓膜を直撃する。

「コラ!不憫とか言ってんじゃねえ!」
「げっ!」
「プーちゃんまた教室の扉、外さないでね」

戸口をくぐってずかずかと室内に入ってきたプロイセンはフランスの指摘も右から左。開けた時とたいして変わらぬ乱暴さで勢いよく戸を閉めた。指定の制服を独特に着こなす彼の銀髪の上には、いつも通りかわいらしい小鳥がぴよ、ととまっている。
プロイセンはロマーノの側までくるとごついシルバーリングが幾つも嵌った指でむいむいとロマーノの頬を引っ張った。ぎゃあぎゃあと叫んでロマーノが手を振り回すが、リーチの差は如何ともし難く、プロイセンはケセセと笑って焦げ茶の髪を存分に撫で回す。
犬の子じゃないんだから、と苦笑しながらもフランスは羨ましさを否めない。漸く触れる距離くらいは許してくれるようになったロマーノの髪を撫でたところ、「なんかお前の触り方えろい」と言って真っ赤になって逃げられた。それ以来なんだか迂闊に触れなくなったフランスだ。むしろあの時の俺の理性万歳。

「不憫に不憫って言って何が悪いんだよ!」
「だから認識が間違ってんだよ!ふん、まあいいぜ、お前らは俺様にひれ伏すことになってんだからな!」

そう言って片手に抱えていた箱を得意気に掲げるプロイセン。もしや、とフランスが目配せすると、にたあと機嫌のいい笑顔を浮かべる。赤葡萄色の目が凶悪に歪んで形のいい唇が吊り上がる。黙って立っていれば男前なのになんでそういう表情をするのかなという顔で彼は答えた。

「裏小路のカフェ、限定三十個クレームブリュレ!」
「え、あの店か!?」
「女子大生や近所の奥様方に混じって並んだ俺様ちょーかっこいいぜっ!」
「やったじゃんプーちゃん!いやあ、お兄さんお前行かせて大正解」
「そんなん別にカッコ良くねぇし。っていうかフランスもさり気に誉めてないだろ!」

ロマーノのツッコミもものともせずフランスは絵筆とパレットを置くと、ぱんぱんと手を払って立ち上がった。

「じゃあお茶いれるぞ。ロマーノはアップルティー?」
「え、けど俺……」
「三人分あるぜー。俺様が買い忘れるわけねーだろ!フランス、俺コーヒーな」
「お兄さんはロマーノの希望しか聞いてません。っつか、お前も用意するんだよ!クレームブリュレを手掴みするつもりか?」

がっしとプロイセンの腕を掴んで歩き出す。あえなく美術準備室に引きずられていきながらプロイセンはフランスの腕の強さにひやりとする。見かけによらず案外強いのだ、こいつは。ぎろりと肩越しに睨みつければにっこりと食えない笑顔。(この笑顔に何故か女生徒たちは落ちるのだ)

「牽制かけてんじゃねえよ、この野郎」

呆れた顔で見送るロマーノには聞こえないように犬歯を剥き出しに低く唸れば、同じようにロマーノには聞こえないように、フランスは笑顔を崩さないままで剣呑に囁き返してきた。

「お前をロマーノと二人っきりにさせるわけないだろ」

抜け駆け禁止、そう言ってロマーノから死角の位置で関節を逆に締められてプロイセンはぎゃあ、と声を上げた。

「じゃあちょっと待ってな」
「あ、ああ……」

ばたんと閉まった準備室への扉に手を振って、ロマーノは静かになった室内を見回す。窓からの陽射しに、放置された描きかけのキャンバスが淡い影を伸ばしている。ぼんやりとまた椅子の背もたれに顎を預けて所在なげに欠伸をひとつした。
放課後、予定がない日はいつもロマーノはここに来ている。特に何をするわけでもなく、置いてある美術史関係の本を読んだり(特に美術建築史が好きだった)、フランスが絵を描くのを眺めたり、プロイセンが彫刻をしているのを眺めたりする。昼寝をすることもあった。
ロマーノは美術部員ではないのだ。
一番最初に此処に来たのは、人づてに聞いてスペインを探しに来た時だ。スペインがフランスやプロイセンと仲が良いのは聞いていたが、実際に会ったのはそれが最初。その時、スペインはロマーノのことを凄く怒った。普段はロマーノのどんなへまにも笑って許してくれたスペインが、一言も口をきかず引き摺るようにロマーノを連れて帰り道を歩く間、黙りこくったままだった。
二度と行くなと言われて、怖くて怖くて泣きそうだったのにロマーノは約束を破ってまたこっそりと放課後の美術室に行った。最初はスペインの言ったことに逆らっている事実と、彼の友人であるという二人の上級生が怖くてたまらなかった。それでも意地と好奇心に突き動かされてなけなしの勇気を振り絞り、何度も訪れるうちにそれはいつしか習慣になっていた。
フランスもプロイセンも、何も言わずともロマーノが美術室に来ていることをスペインには黙っていてくれる。ロマーノが美術部を訪れるのはスペインが部活で鉢合わせしない、かつ他の美術部員が居ない曜日。それは暗黙の了解になっている。この場所が心地よいと思うようになったのはいつからだろうか。フランスはちょっと変なところもあるけれど、大人びていて優しい。プロイセンは乱暴で子供っぽく、よくからかってくるけれど、互いに遠慮がないのが嬉しい。口が裂けても言わないけれど。
首を振って立ち上がる。ぐるぐるとネガティヴに渦を巻き始めた思考を追い払おうと、ロマーノは窓に近寄って軋むガラス戸を引き開けた。ざあ、とさわやかな風が吹き込み、中庭の緑の香りが意識を切り替えてくれる。

(曲、聞こえる……)

窓の桟に手をついてロマーノは目を瞬いた。ピアノの音が鮮明になる。そこでそういえば美術室は中庭を挟んで音楽室と一階違いの向かい合わせだと思い当たる。向こうも窓を開けて弾いているのだろう。早いテンポの旋律がつっかえることなく優雅に紡がれている。
よく知っているその曲にぎう、とロマーノの左胸が軋んだ。八分の六拍子、アレグロ。無意識に上履きを履いた爪先が床を叩いてステップを踏みだす。いち、に、さん、し、ターンして更に二歩。複雑なステップを淀みなく踏んで、ロマーノは曲に合わせて踊りだす。右右左左二度回ってバックステップ。舞うような手指が鷹のように閃いては鋭く弧を描く。
曲目はタランテラ。昔にナポリで流行った舞踏病を治すために踊られたテンポの速い舞曲だ。
ロマーノは以前は舞踏部に所属していた。古典民族舞踊が得意で中でもタランテラが一等上手かった。いつもはつんけんしていて取っつきにくい彼だが、踊っているときの姿はとても素敵だと、誰もが皆、ロマーノと踊りたがった。 思い出してじわりと目頭が熱くなりロマーノは目を瞑った。それでも体は止まらない。曲に合わせて複雑に歩を踏んでくるくると回る。三度、四度、翻した手を叩いて跳ねるようにターン。滲んだ涙が熱く、それよりももっと胸が焼けるように苦しい。

『踊ってるロマーノはほんま別嬪さんやから、親分心配やわ。誰とも踊ったらあかんよ』

スペインの言葉がまざまざと蘇る。舞踏部をやめたのはスペインのせいだ。苦しくて心が千切れそうになる。なんでスペインはあんなことを言うのだろうか。好きだとか愛しているだとか明確なことは一言も言わないくせに。ただ、勘違いしそうになるような甘くて優しい言葉をたくさん寄越すのだ。

(狡い、狡い狡い……!)

人の気も知らないで、優しいスペインは残酷だ。弟のヴェネチアーノに可愛いと言うのと同じ声音でそんなことを言わないでほしい。
それでもロマーノは、スペインに言われた通りに舞踏部を辞めた。
問いただしたいけれど臆病すぎてロマーノは訊けない。イタちゃんもロマーノも大好きやで、なんていつもの明るい笑顔で言い放つスペインが容易に想像できてしまう。
いくら鈍いスペインでも、ロマーノの気持ちくらいとっくに気付いている。それでもずっと曖昧なまま優しい言葉で核心に触れないスペインは、わざとなのだろう。彼は優しいからだ。けれど優しい男だから誰にでも優しい。そしてその優しさはロマーノにとって苦痛だ。
目を瞑ったままロマーノは踊り続ける。二歩を跳んで裏拍子でステップを踏むと、右回りに二度。曲のテンポがどんどんと早くなっていく。蜘蛛の毒にやられて舞踏病にかかったら毒が抜けるまで踊り続けなければならない。本当の原因は蜘蛛の毒ではなかったかもしれないが、ロマーノは知らない。痛む胸をこらえてロマーノは踊り続けるしかないのだ。スペインに支配される甘い毒が体を蝕んでいる。
解き放たれたいのに囚われたまま、一心不乱にロマーノは踊る。踊り続ける。

「……っ、ぁ?!」

不意に、何の前触れもなく翻した手を掴まれた。ぎょっとして目を開けたロマーノの視界に鮮烈に輝く赤い眼が映る。プロイセンだった。なんで、と問う暇もなく腰を掴まれ引きずられるように抱き寄せられる。二人で踊る立ち位置だ。驚きながらもそれでも曲に乗って踊る脚は止まらない。いち、に、さん。スタッカートと一緒に跳んで爪先で床を叩く。プロイセンの足が奔放ながら見事に複雑なステップを踏んでリードをとる。行き違って逆回り、脚が絡む距離を危なげなく引いては近づき、近づいては離れる。
プロイセンの長い脚が力強い歩調で床を蹴る様に見惚れそうになる。鋲を打ちつけたブーツを履いて踊ればよく似合うだろう。更に速くなる旋律に合わせて嵐のように。身を翻して弧を描く軌跡を交わらせて互いの肩を抱き、腕を絡めて翳した手の下をくぐって三歩。目が合った刹那、プロイセンは赤い眸をきゅう、と歪めて微笑った。ぐ、とやや強引に強く肩を抱かれてリードされる。腰を絡めるように複雑に行きつ戻りつ床を蹴って跳ぶ。
どくりとロマーノの心臓が高鳴る。ラストに向けて早まる旋律に負けじと早鐘をうつ。そこでロマーノは気付いた。まだ胸は苦しいけれど、今はもっと踊っていたいと思う。
クライマックスを激しいステップで踊りきって、ピアノの音は余韻を残しながら和音を響かせて曲を締めくくった。 互いに会釈をして、絡めた指が解かれた。漸く、先程喉元でつっかえて出てこなかった言葉が出てきて、ロマーノは息と一緒にそれを吐き出した。

「な、んでいきなりお前……っ」

独りで踊っていたところを見られただけでもきまりが悪いというのに、思い返せば恥ずかしくて顔が熱くなる。またからかわれるのだろうと思ったが、予想を裏切ってプロイセンはいつものによによ笑いで答えなかった。ただ形の良い眉を吊り上げて平然と返した。

「なんで、って、オマエと踊りたいから踊っただけじゃんか。他に理由ねえよ」
「え、」

それは至極当たり前のことだ。その当たり前をロマーノはいつの間にか忘れていた。虚を突かれたように目をみはったロマーノにプロイセンは腕を伸ばすと、その焦げ茶色の髪をわしわしと撫でた。今度はいつものようにによりと唇を曲げて笑うと聞く。

「で、小鳥のように華麗にかっこよく踊る俺様に惚れ直したかよ?なあ?」
「な、……ちょ、調子にのるなコノヤロー!馬鹿プロイセン!大体半分レントラー混じってたじゃねーか!」
「俺様流だよ。ケセッ!ロマーノちゃんはほんっとに素直じゃねえなー」
「うるせえ!」

口が裂けてもやっぱり言わない。真っ赤になってぶんぶんと首を横に振ったとき、苦笑と一緒にフランスの声が投げかけられた。

「妬けちゃうねぇ。俺もロマーノと踊りたいんだけど?」
「フ、フランス!」

吃驚して弾かれたように振り返れば、いつの間に戻ってきたのかフランスが扉に背を預けて笑っている。横に立つプロイセンはさして驚いた様子もないということは、既に気がついていたということか。思い返すと余計に恥ずかしくなってロマーノは耳まで真っ赤になった。フランスにぶつける罵声が瞬時に見つからず声を詰まらせた刹那、不意に真剣な声音が彼の口から零れ落ちた。

「プロイセンの言うとおりだよ、ロマーノ。踊りたければ踊ればいい。苦しくても踊りたいってお前が思うなら踊ればいいんだぞ」

はっとして顔を上げる。フランスは相変わらず微笑んでいたが冗談を言っているようには見えなかった。

「踊るかどうかも、踊る相手もお前自身で決めるもんだ」
「……フランス」

隣でプロイセンがなにを当たり前のこと言ってやがる、と鼻を鳴らした。当たり前のことを言われて、ロマーノは今更にその意味を理解する。

「苦しくてもロマーノが構わないならそれでいい。でもそういうのって苦しいだけのものじゃないでしょ。恋もそれとおんなじ」

恋愛も同じ。恋をすることは苦しいけれど、苦しいだけのものではない。言われてロマーノは思い返す。プロイセンに手を取られて踊ったとき、フランスに名を呼ばれたとき。二人と一緒に笑っているとき。
じわりとまた目元が熱くなって視界が滲むのを、ロマーノは唇を噛み締めて耐えた。でもきっと理由はさっきとは別のものだ。
フランスが歩み寄るとロマーノに手を差し出す。それを見たプロイセンが狡いぞ、と同じように手を伸ばした。

「「俺と踊りませんか?」」

一曲といわず、もっとずっと。苦しいばかりで独り踊り続けるのも或いは良いのかもしれない。けれどロマーノに選ぶ気持ちがあるのならば、解き放たれてもっと自由に踊れるのだと、二人は言う。
ぼろぼろと涙を零してロマーノは目元を擦った。溢れ出すものがとまらない。

「……二人とも、俺についてこれんのかよ!」

じゃじゃ馬の跳ねっ返りの意地っ張りで、ロマーノと踊る相手はきっと大変だろう。それでもいいと二人が言ってくれるのならば、踊りたい。
素直になれないロマーノの牽制の一言にフランスとプロイセンは顔を見合わせてにやりと笑った。

「お兄さんを誰だと思ってるの」
「ふん。プロイセン様をなめんなよ」
「うるせえ、馬鹿!」

罵声と裏腹に泣き顔のまま笑ったロマーノは差し出された二人の手を強く握った。








Tarantella







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20100504